工業材料シリーズ 技術資料

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第2章「さびにくい=StainLess」鋼(Steel)。合金成分としてクロム(Cr)を11%以上含み、鉄以外の合金成分の合計が50%以下の鋼で定義されている。これはクロムが約11%以上になると、表面に形成された不動態皮膜により、さびにくさ(耐蝕性)が飛躍的に向上する性質からきている。★ステンレス鋼の分類(A)主原料がクロムとニッケルという合金組成的な面からは、主にクロム系とクロム・ニッケル系に二分(B)される。金属組成的にはマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系の三系統に分かれる。①13Crステンレス鋼・・・13%のCrを含む。炭素量が多い場合はマルテンサイト組織のため、マルテンサイト系とも呼ばれる。一般の鋼と同様に、熱処理(焼き入れ・焼き戻し)により高強度、高硬度などのすぐれた機械的特性が得られる性質をもつ。さらに常温で磁性を有している。但し、他の系統のステンレスに比べ、耐蝕性の面では劣る。主に刃物・洗面用具・アイロン・トースター等に用いられる。JIS規格ではSUS403などがある。②18Crステンレス鋼・・・18%のCrを含む。フェライト組織のためフェライト系とも呼ばれている。熱処理しても硬化する性質をもたないが、耐蝕性・耐熱性の面ではマルテンサイト系ステンレスよりもすぐれた特性をもつ。常温で磁性を有している。SUS430があり板金用として使われる。③18-8ステンレス鋼・・・18%のCrと8%のNiを含む。熱処理では硬化しないで軟化する、いわゆるオーステナイト組織のためオーステナイト系とも呼ばれる。フェライト系ステンレスに比べ、機械的性質、溶接性などにすぐれているので、多くの用途に用いられる。深絞り性にすぐれ、流しなどの厨房用品・冷蔵庫棚板・食品工業設備等に使用される。JIS規格ではSUS304がある。ステンレス鋼★ステンレスの不動態皮膜ステンレスの表面には、媒体を遮断する、目に見えない緻密な保護膜が形成されており、これを不動態皮膜と呼ぶ。ステンレスの不動態は、環境中の水ならびに酸素などの作用によって、わずかに溶け出したイオンが、鋼の表面に極めて薄いクロムの水和酸化物、ないしオキシ水酸化物を主成分とした緻密で化学的に安定した保護皮膜を形成した状態であるとされている。この皮膜は表面傷によって一度傷ついてもすぐに修復されるという性質を持っている。この不動態膜の形成に最低限必要なクロムの量が11%であると考えられている。不動態皮膜の存在により、地金の金属が溶液中に溶け出しにくくなる。★ステンレスの腐蝕ステンレス鋼は一般の鋼に比較すると極めてすぐれた耐蝕性を有する材料であるが、特定条件下では「さび」を生じる為、正しい使用をする事が重要である。ステンレスがより良い耐蝕性を持っているのは、その表面につねに作られているクロムの酸化皮膜の作用によるもので、その不動態皮膜が破壊された場合には、耐蝕機能は失われる。不動態を形成し得ないような場合を、全面腐蝕といい、鋼の表面からほぼ均一に腐蝕が進む。局部的に不動態皮膜が破壊されるような場合を局部腐蝕といい、局部的に表面から腐蝕が進行する。局部腐蝕はその腐蝕の形態により更に、粒界腐蝕、孔蝕、隙間腐蝕、応力腐蝕割れなどに分類される。2-5


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