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硬質塩化ビニル板は、耐薬品性にすぐれた材料であり、広範囲にわたって使用されている。ほとんどの強酸、弱酸、アルカリ、塩類、動植物油に侵されないが、ケトン類、エステル類、エーテル類、ベンゾール系などの有機溶剤や、炭化水素の塩化物などに侵され、膨潤、強度劣化、溶解する場合がある。また、耐薬品性は薬品の種類のみではなく、温度、濃度、応力などによって大きく変わるので注意を要する。4-9-1.薬品による劣化の状態4-9.耐薬品性第4章第4章金属材料の腐蝕は、イオン化、酸化等の化学変化が主となるが、硬質塩化ビニル板においては、薬液の浸透、拡散、溶出などの物理化学的劣化が主である。硬質塩化ビニル板の薬品による劣化状態は、膨潤軟化、機械的性質の低下、クレーズ、クラック、変色、ふくれなどの形で表れる。-9-2.確認事項(1)薬液の種類混酸の組成や、溶剤混入の有無については特に注意を要する。有機溶剤系、炭化水素の塩化物などにはほとんどよくない。各種薬品の耐薬品性の目安として、一覧表を参照して頂きたい。(2)濃度一般に濃度が高いほど劣化の傾向は強くなるが必ずしも薬液の濃度と耐薬品性は比例せず、場合によっては濃度の低いほうが、耐薬品性の悪い場合があるので注意を要する。(3)温度一般的に、高温域ほど、薬品が活性化され、さらに塩化ビニル板の機械的強度が低下することから劣化は大きくなる。また温度変化が激しいほど材料が疲労するので劣化する。(4)応力負荷状態環境応力割れと呼ばれているように、プラスチック構造体に残留ひずみや応力負荷がかかっている状態にあるほど、腐蝕が増長され、クレーズやクラックが発生し、破壊することがある。溶接加工部、熱加工部、冷間加工、接着ライニング、ルーズライニング、設置条件等におけるひずみや応力負荷により破壊の危険性があるため十分に注意を要する。また、溶剤亀裂(ソルベントクラック)と呼ばれているように、溶剤により膨潤軟化を起こし、残留ひずみ、応力負荷によりクラックが発生する極めて複雑な破壊機構がある。4-324