工業材料シリーズ 技術資料

工業材料シリーズの技術資料となります。


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(4)溶接時の注意事項①溶接部の焼け・焦げ溶接部の焼け・焦げは禁物である。溶接継手強度の点だけからすると、一般に淡黄色(きつね色)程度の軽い過熱のほうが加熱不足よりは逆にすぐれている。しかし、柿茶色になると、オーバーヒート部は、材料が完全に炭化物になっているため炭化物を削除せずに次の多層盛を行ってもこの部分は融着せず、異物をビード内に介在したままの状態となって欠陥部を作る。欠陥部は内部ノッチとなって破壊を招きやすくするため、その部分を削除してから改めて溶接しなければなられない。溶接線の短い厚板の溶接に焼焦げの現象がよく見られるが、これは多層盛りの場合、比熱が大きく、熱伝導係数の小さい溶接部が蓄熱し、焼け・焦げの現象が発生しやすい状態となるためである。したがって単層溶接の条件をそのまま用いるのではなく、蓄熱状況を考えながら慎重に溶接する必要がある。また箱の内コーナ部等を溶接する際には、熱風がこもりやすく、焦げやすいので注意が必要である。②変形熱風溶接において変形および割れの発生する理由は、溶接ビードの収縮および母材の塑性変形によるものである。・溶接変形の影響・薄板になるほど変形は大きく、変形によって構造物の寸法が狂う恐れがある。・不規則な変形のため製品の外観を損ねる。・変形しているため外力による応力集中が発生しやすくなり、溶接部を起点として破壊が起こりやすくなる。特に変形部は温度変化の繰り返しなどによって最初の変形から異なった変形になることもあり、曲げ作用による疲れ破断が発生しやすくなる。・変形及び割れの防止法一般に変形の発生を少なくするためには下記のような事が考えられる。・溶接は必要以上に層数を増やさず、熱履歴をできるだけ少なくする。・溶接棒の継足し部を各層適宜分散配置させる。・熱を一部に集中させず適宜均等に配分させる。・出来るだけ溶接ビード内の蓄熱を防止する。但し、溶接後の急冷は溶接ビード及び周辺に割れが発生する危険があるため行うべきでない。8-50


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