工業材料シリーズ 技術資料

工業材料シリーズの技術資料となります。


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③残留応力溶接は溶接部全体が同時に加熱・冷却されるものではなく、順々に進んでいくため、溶接部は各部分ごとに加熱・冷却され、溶接変形(歪み)が生じる。実際には不均一な加熱によって生じた不均衡がすべて変形という形に出るわけではなく、外部から見ただけでは解らないが内部に力が残る。これを残留応力という。一般に、変形を少なくしようと(歪み抑制)すれば残留応力は大きくなり、残留応力を小さくしようとすれば溶接変形は大きくなる。したがって、用途に応じてうまく害のあるほうを小さくするようにすることが大切である。★残留応力の影響・板厚が大きくなるほど溶接変形は小さくなるが、残留応力は大きくなり溶接製品の仕上げ加工を行ったとき残留応力に変化が起こり、変形が生じたり、割れが発生することがある。・繰り返し荷重を受けるとき、残留応力があると疲れによる材料の破壊が起こりやすくなる。・低温で使用される場合、非常に脆い破壊を起こすことがある(低温ぜい性破壊)。・薬液その他の環境あるいは特殊な雰囲気中で劣化をともないその結果破壊することがある。残留応力に起因する割れ(ストレスクラッキング:ESC)の他に薬液中に溶剤が存在すれば溶剤割れ(ソルベントクラッキング:SC)が追い打ちをかけることになる。・拘束力が大きくなるような状態では溶接の進行中に割れを生ずる恐れがある。★アニーリング大きな残留応力を持った材料の加熱曲げ加工を行う場合、各部分は不規則に変形し、さらに溶接による局部的な変形が追い打ちをかけるので残留応力を小さくすることに注意を払わなければならない。板相互の溶接継手部についても溶接ビード周辺は溶接熱履歴による材料の局部的劣化と残留応力がある場合、機械的荷重を受けてさらに劣化度合いを増し、重大な事故につながることがある。残留応力の除去はアニーリングに依らねばならないが、プレス法・押出法いずれの板も原板製造後か、または加工前に熱風循環炉、遠赤外線加熱炉や油浴に投入してアニーリングを行う方法が採られる。加工時の残留応力を解消する手段は加工品のアニーリングがもっとも良い。加工品全体を軟化点付近まで加熱し、その後徐々に室温まで冷却することにより局部残留応力は大幅に解消される。しかし、加工品は寸法や形状の問題から、これを加熱炉に入れて加熱することは困難なケースが多く、また加熱により全体的に収縮変形する恐れもあるため、そのような場合、補助的手段として溶接後直ちに溶接部周辺をホットジェットやドライヤーなどで全体的に暖め、さらに断熱材でくるみ徐冷することによって、ある程度の応力除去が可能である。またバンドヒーターを当てて幅広く加熱し、同様に徐冷する方法もある。④接着剤の使用溶接によって装置を組み上げる際、溶接前の仮組みのために接着剤を使用する場合がある。接着剤は、作業環境・使用状態にもよるが完全乾燥までに数日を要する。見かけ上乾燥しているように見えても、シート内部に溶剤が残存しており、発泡などの不具合が生じる場合があるため十分注意が必要である。接着剤塗布後、すぐの溶接は、溶剤アタックによる割れの危険とともに、溶剤の揮発成分が充満している場合、引火の危険性もあるため、絶対に行ってはならない。8-52


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