工業材料シリーズ 技術資料

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(6)安全性について★溶剤ガスの発生について①接着ライニング時の溶剤ガス塩化ビニル板を防蝕ライニングに利用する場合は、ルーズ法と接着法とがある。溶剤ガスによる事故が起こるのは接着ライニングの場合である。接着ライニングにおける接着剤は一般にニトリルゴム系フェノール変性のものを有機溶剤メチルエチルケトン(MEK)に分散させたもので、塗布時の固形分は約20%である。言い換えれば溶剤が約80%あるので、ライニング時の加熱からライニング後の養生・乾燥段階まで溶剤の揮散が持続することになる。板同士の溶接接合はライニング終了後24時間放置してから行うが、200℃以上の熱風を吹き付けるため残留溶剤の揮散を助長することになる。そこで金属製の工具等で打撃を加えたり落下させたりした場合、発生する火花で溶剤爆発を起こす危険性がある。密閉タンクに限らず複雑な構造の塔槽類やダクト類の溶接時には必ず換気ファンを設け、新鮮な空気を送り、あるいは排気を確実に行って作業しなければならない。これを怠ると作業性が悪いのみならず、溶剤ガスの吸入により気分が悪くなったり幻覚症状や失神、はなはだしいときは生命にかかわることもある。②溶接部の脱脂・清浄化における溶剤ガス溶接面を清浄にし、かつ脱脂を行うために有機溶剤がしばしば用いられる。脱脂・清浄化における溶剤第8章上記の諸条件をよく満たすものとして、かつては不燃性で溶解力の高いトリクロロエチレン(トリクレン)が多用されていた。しかしトリクレンはその後、毒性が強いことが分かり、PRTR法でも有害物質としてリストアップされ、今日では使用されていない。人体への安全性を考慮すればアルコール類がもっとも適当である。脱脂効果を上げる必要がある場合にはアセトンやMEKを使うこともやむを得ないが、これらはすべて引火性が強いので火気の取扱いに注意が必要である。一般に有機溶剤の人体への影響は呼吸器からのガス吸入と皮膚からの溶剤吸収により起こる。有害な作用は主に麻酔作用であるが、持続的に接していると嗅覚が鈍り、多量に吸引することとなり、前述のように幻覚症状を起こしたり生命の危険性が生じるので、換気・火気の注意の他、マスクや眼鏡等の着用も心掛けるべきである。の条件として以下の項目が考えられる。・油脂類に対する溶解力がすぐれていること・引火性が無い、あるいは小さいこと・作業性が良く、毒性が無いこと・揮発性で表面に残留しないこと・腐蝕性が無く、化学的に安定であること8-57


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